大宮駅周辺の”街路沿道空間”に関する景観調査を行いました。


6/2(日) 慶應義塾大学石川初研究室/芝浦工業大学鈴木俊治研究室と協働で大宮駅周辺の”街路沿道空間”に関するフィールドワークを行いました。

大宮駅周辺で進む大宮駅グランドセントラルステーション化構想、公共施設再編、氷川参道歩行者専用化など多くの個別整備計画が進んでいますが、UDCOは、現在の空間のかたちやその背後にある秩序の魅力(”大宮らしさ”)を発見し、個別整備計画が持つべき共通の価値基準に反映することが必要なのではないか、そのような出発点で大宮駅周辺の景観調査を積み重ねています。特に歩行者の体験を大きく左右する「街路沿道空間」に着目し、現在の大宮駅周辺の都市空間の構成要素<建築物・公共サイン・屋外広告物・植栽など>の調査を行うことで、”大宮らしさ”を捉えようとする取り組みを行っています。

その取組の一環として行った今回のフィールドワークでは、両校の学生がそれぞれ石川先生、鈴木先生のチームに分かれ、独自の視点を交えながら「街路沿道空間」にある看板やサインといった「屋外広告物」に着目したまちあるきと調査分析を行いました。

まちあるきの様子

鈴木先生のチームは、まちあるきの際に撮影した写真について、”大宮らしい”街並み(良い面、良くない面どちらも)と思うものをそれぞれから10-15点程度選び、それぞれ屋外広告物の占める割合等について把握する調査を行い、それぞれの写真についてなぜ、“大宮らしい”と思うのかについて議論を重ねていきました。

屋外広告物の占める割合が同じ写真でも、全く印象は異なることが明らかになり、それ以外のフォント・色彩・看板の大きさ・高さなどの要素が重要なのではないかという内容がプレゼンテーションされました。面積という定量的かつ客観的な根拠を元にしてまちなみの写真を比較していくことによってその他の重要になっているパラメータはなにかが分かってくる興味深い調査内容でした。

鈴木先生チームの発表の様子

石川先生のチームは、まちあるきの際に撮影した写真を並べて、大宮の”屋外広告物”の持つ特徴はなにかについて議論を行いました。議論の結果、屋外広告物は「街と人のコミュニケーション」と捉えられ、大宮の屋外広告物には6つの特徴があるのではないかということになりました。例えば、以下のような内容になります。

「機嫌」・・地上にある張り紙等のサインは手作りが多く、喜怒哀楽の感じられる『どうぞお入り下さい』『駐車禁止!』のようなものが多いのに対して、建物上層階に取り付いている看板は企業名のみのものが多く無表情に感じられる。

「射程」・・地上にある屋外広告物は、コミュニケーションを取る距離感が近く、特定の人を対象にしたものであり、かつ、時間軸としても短時間のメッセージが多いが、高いところに設置された屋外広告物はコミュニケーションを取る射程が広く、不特定多数の人を対象にしており、かつ、屋外広告物は恒久的なものが多い。

上記のような特徴を踏まえたうえで、場所ごとに適切な「機嫌」「射程」などを組み合わせて考えていくことで、適切な「街と人のコミュニケーション」について考えていけるのではないかという発表の内容でした。物的な特徴の背景にある、なぜ手書きでメッセージを伝えるのかという文化的な側面・看板の大きさなどにあらわれる経済的な側面を踏まえた考察がなされ、とても興味深い発表内容でした。

石川先生チームの発表の様子

道路や建物等の物的な構成要素の特徴を捉えるアプローチとそれらの物的な構成要素の特徴が持つ意味を文化的・経済的側面も含めて読み解くアプローチの両面からの調査が行えたことで、例えば「機嫌」の良い屋外広告物は、どのような構成要素が効いているのかなどの議論が活発になり、多くの重要な視点が得られた良い機会となりました。

慶應義塾大学石川初先生、芝浦工業大学鈴木俊治先生、両研究室の皆様に御礼申し上げます。誠にありがとうございました。